難しい解剖生理を分かりやすく、簡単にとらえてみよう!と始まった世界初の試み『解剖生理☆イケメン擬人化計画』。その第1弾は消化管&消化器(消化器系)の解剖生理です。前・後編に分けて説明しますが、前編の今回はまず消化器系の役割について簡単に理解していきましょう。以下の文章は、解剖生理の教科書や参考書を見ながら読み進めていくことをオススメします。
1.消化器系は人体の細胞に食事を提供するレストラン
前回までのあらすじ…。解剖生理の勉強を始めたAちゃん。しかし、難しい解剖生理の前になす術(すべ)なく立ち尽くしてしまう。そこで、国試担当の杉村先生が『解剖生理イケメン☆擬人化計画』を進行させるのであった…。
Cさん、非常にわかりやすいあらすじ説明ありがとうございます。
先生、そもそも『解剖生理☆イケメン擬人化計画』ってなんですか?
皆さんが苦手とする人体のいろんな働きを、人間社会のいろんな場面に例えて説明できないかなぁと思っていて。看護学生は女性が多いですし、どうせだったらみんなイケメンがいいんじゃないかなぁって思っただけなんです。
普段、Aちゃんがシッカリ者で、私がオチ担当なのに。今回ばかりはAちゃんがポンコツちゃんで困ってるんで、先生とりあえず早くしてください。
では、記念すべき第一弾は消化器系について説明しましょう。消化器系を例えるなら…【イケメン☆レストラン】です!
先生、さっそく思ったんですけど、毎回その‘☆’いるの?
なんか‘☆’が入るとイケメンっぽさが増しませんか?
Cちゃん、ツッコむところそこじゃないし、先生も変なところにこだわらないでください!レストランってどういうことですか?
では、まず人体の生命維持に重要な〔呼吸・循環・代謝〕と合わせて消化器系の働きをご説明いたしましょう。解剖生理の教科書を手に説明を聞くと分かりやすいですよ。
人体の生命維持において重要な働きはたくさんあるわけですが、特によく言われる3つが〔呼吸・循環・代謝〕です。これらは体内で起きる反応ですが、その中の代謝に消化器系は関係しています。人の生命活動を支えるためには、たくさんのエネルギーや栄養を必要とし、これらを人は食べることで外部から得ているわけですね。この役割を担うのが、消化器系です。口から食べたものは、咀嚼され、運搬されながら、分解された栄養素が小腸で吸収されます。そして吸収された後の残りは便として排泄されるわけです。この過程って料理に似ていると思いませんか?料理を作るとき、食べやすい大きさに食材をカットして、さらに火を加えるなど調理をすることで食べやすくしていますよね。そして、食べられない部分は生ゴミとして捨てられます。ただし、人体の場合は普通の料理と違ってもうひと手間加えられています。それは小腸で吸収された栄養素がいったん肝臓へ運ばれて、そこで栄養素を蓄えやすい形に変えたり(栄養の蓄積)、細胞が栄養をすぐに必要としているときは蓄えていた栄養素を細胞に供給できるような形に変えて供給をします。
ではこれをレストランで例えると…。お客さんは体内の細胞たちです。そして細胞へ提供する料理は、口から食材が仕入れされて、それを胃や十二指腸を通る間にさまざまに下ごしらえをした状態で小腸から吸収され、肝臓という料理人へ渡されます。肝臓では下ごしらえされた食材が巨大な冷蔵庫に蓄えられ、細胞たちのオーダーによってすぐに調理されて提供されるというわけです。
消化器系の働きは、まるでレストラン!栄養の分解、蓄積、そして細胞たちへ栄養たっぷりの料理を供給する。
2.消化管による運搬について
なるほど~!確かに消化器系の働きって、料理を作るのと似ていますね。
でも先生、これの一体どこにイケメン要素があるんですか。
そこは皆さんのお好みのイケメンキャラで脳内補完してください(笑)
肝臓さんはクールで職人気質な料理人なんですよね。食材の下ごしらえは胃や十二指腸、胆嚢、膵臓といった見習いの料理人たちがやっていて、大腸くんが一番若い見習いで、まだ皿洗いや食材の後片付けくらいしかさせてもらってないんだけど、いつかは肝臓さんみたいなカッコイイ料理人になりたいんだって夢見てるですよ…。
すごい、わずかな情報でここまでキャラ設定を考えるなんて、恐ろしい…。ていうか大腸が肝臓になっちゃったら大変だから。大腸は一生、大腸でいてくれないと。
大腸は一生、大腸でいてくれって(笑)今回は迷言にあふれてますね。
そして私は、そのレストランで働くことになった新米のウェイトレス。みんなで私を取り合って、…ぐふふふっ。
Aちゃん自身も消化器系の中に混じろうとしてる。なんて妄想力なんでしょうか…。
ちなみに肝臓には栄養の蓄積・供給だけでなく解毒作用もあるので、きっと肝臓さんはフグの調理師免許とか持ってるかもしれませんね(笑)
しかも先生、よく見ると肝臓から出ている総肝管に胆嚢がつながっているっていうことは、もしかしたら胆嚢くんと肝臓さんは血縁関係にあるのかもしれませんよ!
でも面白いかも、肝臓と胆嚢の隠された血縁関係って。確かに解剖図をみると肝臓の下に隠れるように胆嚢があるよね。まるで肝臓が胆嚢をかばってるみたいに。ちゃんと肝臓と胆嚢がつながっているっていう解剖学的特徴を覚えられるものね。
すみません、僕もちょっと遊びすぎましたが、擬人化するとキャラ設定が浮かんできて面白いですね。では次は少し細かく、消化管の働きや解剖学的特徴についてみていきましょう。
消化器系は大きく消化管と消化器に分かれます。まずは消化管について説明しましょう。人体の構造は単純に考えると、筒状になっています。口から肛門までの空洞があるわけです。その空洞を消化管というわけですが、消化管は上部消化管(口腔、咽頭、喉頭、食道、胃)、下部消化管(十二指腸、空腸、回腸、上行・横行・下行・S字結腸、直腸、肛門)に分類されます。
運搬について:このように一本の筒である消化管でも、場所によって名前が付けられているわけですが、すべてに共通している役割とその器官での特有の役割があります。まず、すべてに共通している役割は摂食物の「運搬」です。中でも人が意識して行う動き(随意運動)は咀嚼と排便です。要は人体の筒の両端ですね。食材を噛んで飲み込もうとする動きと、便を出そうとする動きは意識的にしていますが、嚥下反射や蠕動運動というものは不随意運動になります。消化管での運搬の役割はほぼ蠕動運動と憶えておいてよいでしょう。それとは別に、咀嚼や嚥下の働きについては国試だけでなく、臨床においても非常に重要な知識ですのでよく勉強をしておきましょう。
消化管は人体を通る一本の筒。摂食物を運搬する役割を持つ。
3.消化管の要点
たしかに、食道とか胃っていう名前で分類されていても、よく考えてみると結局は一本の管になっているんですね。
先生、蠕動運動で食べたものを運搬するのが消化管の役割ってことは分かったけど、それが上手くいかなかったら?
お、Cさん良い質問ですね~。解剖生理を学んでいるときは正常な働きを学ぶのと同時に、それがうまく働かなかったらどういう異常が起きるか、を意識して勉強できると素晴らしいです。
そうですね、下部消化管での蠕動運動が鈍くなった場合は便秘やイレウスになるでしょう。これらの症状はその原因と合わせて押さえましょう。イレウスになる原因にはいくつかありますが答えられますか?大事な知識なので分からなかったら調べてみてくださいね。
私はよく飲みすぎて嘔吐しちゃうけど、あれってお腹が動いていないのにいっぱい胃に飲み物や食べ物を入れちゃうからなんですかね。
それもありますし、有害なアルコールを体外に出そうとする反応でもあります。お酒はホドホドにですね。
私の体内にも肝臓さんや大腸くんがいると思ったら体を大切にしなきゃいけないと思えてきました♥
では最後はちょっとかけ足になりますが、消化管の押さえておくべき最低限の知識を説明して、消化器(肝臓・胆嚢・膵臓)は次回の後編にしましょう。
ということは、次回とうとう肝臓さんと胆嚢くんの隠されていた設定が明らかになるんですね!?
消化管と言っても上部~下部消化管までそれぞれ異なった役割や解剖学的特徴がありますので、すべてを説明できませんが、教科書にあまり詳しく書いていないような内容や要点を説明します。
食道:食道は咀嚼・嚥下をされた食塊が胃までを流れる通路で、蠕動運動によって運搬される以外、あまり目立つような働きをしているような印象はありませんが、解剖学的に非常に重要な場所にあります。なぜなら、肺や心臓、太い動脈・静脈、嚥下に関係する神経の走る縦隔という場所にあるからです。つまり、食道で起きたトラブルは心臓や肺へも影響を与えますし、その逆もまた起こります。食道において重要なポイントは、他の隣接する臓器や血管・神経との関係を良く理解することです。
胃:まず解剖学的特徴として、食道が縦隔を通りさらに横隔膜を貫通した先に胃があります。これより下の臓器は全て横隔膜下にあるということを憶えておきましょう。さらに、胃内部は細菌の滅菌のためと、タンパク質を分解のために酸性になっていますが、胃の内容物が酸性のまま十二指腸へ流れてしまうと十二指腸の粘膜を傷つけてしまうので、弱アルカリ性の粘液を出して粘膜を保護したり、内容物のpHを中和しています。
十二指腸:特に重要なのは、十二指腸には胆管や膵管を通って胆汁と膵液が流れ出る十二指腸乳頭があるということです。臨床において黄疸や、癌で膵臓切除後の状態を理解するためには周辺臓器との解剖学的構造の理解は超重要です。
大腸~肛門:虫垂、結腸、直腸、肛門とありますが、とくに排便時の肛門の不随意運動と随意運動の働きを理解しておけばよいでしょう。
栄養素と分解酵素について:どの器官でどんな分解酵素が、どこの分泌細胞から分泌されるのか、ということが重要です。ここはしっかりと暗記しておきましょう。
一本の消化管とつながっている消化器、さらには隣接している臓器との関係を意識して勉強をしよう。
うーん、他の臓器との位置関係なんてあんまり意識して勉強してこなかったな。
覚えることは確かに多いんですが、これを理解していると疾患や症状が起きる原因が良く理解できます。一度に全部覚えようしないでいいですから、繰り返し勉強して少しずつ理解を深めていきましょう。
そうですね。実は消化器には他に、『消化管ホルモン』の働きというものも押さえおきたいポイントとしてあるんですが、これはいつかホルモンについて説明する機会を作りますので。
私はもっとみんなのことが知りたくなりました。先生、次も早くアップしてくださいね!
Aちゃん、そのうち自分で擬人化したキャラのマンガとか描き始めるんじゃないかな。
需要があるかどうか…は置いておいて、今回のまとめをしましょう。
【国試対策】解剖生理・消化管&消化器の要点〈前編〉
- 消化器系の働きは、まるでレストラン!栄養の分解、蓄積、そして細胞たちへ栄養たっぷりの料理を供給する。
- 消化管は人体を通る一本の筒。摂食物を運搬する役割を持つ。
- 一本の消化管とつながっている消化器、さらには隣接している臓器との関係を意識して勉強をしよう。
《次回予告~解剖生理☆イケメン擬人化計画 消化器後編(予定)~》
杉村
この記事を書いた人
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